久光製薬 中冨博隆会長 頼りはやっぱり「サロンパス」

久光製薬 中冨博隆会長 頼りはやっぱり「サロンパス」

【怪物経営者 成熟と老害のはざま】

 中冨博隆・久光製薬代表取締役会長(83歳)

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 久光製薬の中冨博隆代表取締役会長は1937年2月6日生まれの83歳。81年5月に社長に就任以来、39年にわたって経営トップの座にある。

 5月21日、佐賀県鳥栖市の本店で第118回の定時株主総会を開催。中冨博隆会長と中冨一榮社長(47)は再任。社外取締役は、三菱銀行専務、ニコン副会長を務めた市川伊三夫(92)と厚生事務次官、内閣官房副長官を歴任した古川貞二郎(85)が再任。慶応義塾理事長兼大学長だった安西祐一郎(73)と地場最大手ゼネコン松尾建設社長の松尾哲吾(48)が新任された。

 久光製薬は社外取締役に大物を招くことで知られる。

 今回は認知科学研究の第一人者である安西祐一郎を招聘した。

■創業は1847年

 久光製薬の歴史は古い。久光仁平が1847(弘化4)年、現在の鳥栖市で売薬業を始めた。

 創業家3代目、中冨三郎(旧姓・久光三郎、中冨家の養子)が、1903(明治36)年、久光兄弟合名会社を設立、初代社長に就いた。

 久光兄弟合名会社時代の34(昭和9)年、貼り薬「サロンパス」を発売。これがロングセラーとなり、経営の基礎を固めた。「サロンパス」は、令和の時代になっても、久光の代名詞だ。

 51年、株式会社に改組すると同時に、中冨正義が父・三郎の後を継ぎ2代目社長に就任。63年、鎮痛消炎剤「エアーサロンパス」を発売。看板商品に押し上げた。65年に社名を久光製薬に変えた。

 正義はホノルルマラソンを77歳から91歳まで連続15回完走するなど、その健脚ぶりで知られた。2011年11月、心不全で死去。満106歳だった。

 久光製薬は2つの顔をもつ。1つは「サロンパス」。もう1つは女子バレーだ。日本の製薬会社で唯一、本格的なスポーツチームを持つ。Vリーグで2年連続通算7度目の優勝をした強豪だ。

 鳥栖工場に娯楽と呼べるものが何もなかった。48年、正義は「社内に活力を」との思いからバレーボール部を創部した。

 博隆は62年、慶応義塾大学法学部を卒業。66年に久光製薬に入社。81年、父・正義の後を継いで3代目社長に就いた。腰痛などに効く鎮痛消炎剤「モーラステープ」をヒットさせた。モーラステープは、今では主力商品になっている。

 2015年5月、博隆の長男、中冨一榮が4代目社長になった。社長交代は34年ぶりのこと。博隆は代表権のある会長に就任した。

 久光製薬に逆風が吹きつける。厚生労働省は膨張する医療費を抑制するため、薬価制度の抜本改革案に「長期収載品の薬価を大幅に引き下げる」と記載した。

 特許が切れた後、ジェネリック(後発品)が登場して10年経過した時点で、長期収載品の薬価を段階的に引き下げる。病院・調剤薬局がジェネリックを使えば使うほど、収入が増える仕組みにした。ジェネリックが出た後の先発医療用医薬品、いわゆる長期収載品の売り上げに依存する製薬会社には大打撃となる。

 久光製薬の売上高トップ「モーラステープ」は長期収載品である。医療用の売り上げが全体の半分を占める。

 20年2月期の連結決算の売上高は前期比1・7%減の1409億円、純利益は2・7%減の186億円の減益だった。主力の「モーラステープ」は医療用湿布薬の処方制限を受け、他社の飲み薬への置き換えが進んだのが響き、伸び悩んだ。

 打開策としてサロンパスを軸に一般用医薬品(市販薬)を拡充する。20年2月期に345億円だったサロンパス群の売り上げを、22年同期に450億円に引き上げる計画だ。飲み薬の鎮痛剤が社会問題となっている米国市場向けに、貼り薬という文化を輸出することを考えている。セールスポイントは貼り薬の常用性の低さだ。

■「海外はブルーオーシャン」

 博隆は「貼り薬文化がない海外は(市場開拓の余地が大きい)ブルーオーシャンだ」と海外展開に大きな期待を寄せている。

 昨年10月、米食品医薬品局(FDA)から経皮吸収(貼り薬)型の統合失調症治療薬の承認を得た。経皮吸収型の同治療剤の承認は米国では初めてである。

 博隆の成熟度は、サロンパスの「貼り文化」を原点に製品の開発を進めてきた堅実さを買いプラス3点。筆者が講師を務めた都内のホテルの勉強会に顔を出すなど、新しいものを吸収しようという意欲は旺盛だ。ただ、父親、正義のようなカリスマ性には乏しい。家業を守るために歴代社長が長期政権である。老害度はマイナス1点としたが、「久光製薬そのものが旧態依然としている」(薬品業界担当の若手のアナリスト)といった厳しい指摘に耳を傾ける必要がありそうだ。 =敬称略

■成熟度 +3
■老害度 -1

※筆者が成熟度を+1~+5、老害度を-1~-5で評定

(有森隆/ジャーナリスト)

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